2003-11-01から1ヶ月間の記事一覧

↓附記

作家にとって、中編というのは理想的な長さだ。長編という大きなレンズを使ったとき必然的に生じる焦点のぼけとは無縁に、架空世界を観察できるからだ。中編小説の中で、作家は−そして運がよければ読者も−登場人物を、設定を、主題を、ゆったりとした描写を…

ダン・シモンズ『夜更けのエントロピー』[bk1]

大石圭は自著のあとがきで自分の作品のことに言及した際"絶望的なハッピーエンド"と評していますが、本書に収められている中短編もその系譜に属するでしょう。そのような作品を作る人として他には誰がいるだろう、そう考えてとっさに思いついたのが黒沢清。…

『愛の見切り発車』つながりで昔買いあさったブックガイドをいろいろつまみ食いする生業。 ハイデガーの名前を説教臭く使用できるほど彼の思想に通じてるわけではないので、"もう、最高! "としかいえない。せっかく苦労して読んだ本なのにこんなことしか言…

西尾維新『きみとぼくの壊れた世界』にPaul Erdosの名前が出てきて*1びっくりしたのを思い出した、今頃! というわけで『放浪の天才数学者エルデシュ』[bk1]を読んで涙が出るほどキュートなエルデシュ先生の人生を味わってください。研究室時代、お師匠さん…

いつのまにか柴田元幸『愛の見切り発車』を全部読み返してしまうのは今回でいったい何度目なのでしょう。(そーゆう本はほかに瀬戸川猛資『夢想の研究』、小林信彦『小説世界のロビンソン』などなど)

盛田隆二『ストリート・チルドレン』[bk1]

「新宿を舞台に、ある一族の300年にわたる「生」と「性」の軌跡」…読む前は多少ガルシア=マルケスや中上健次を期待してました。だって作者も巻末に付されたインタヴューで言及してるし…。 実際よんでみたら実にシンプル。ヤッて産んで生延びてヤッて産んで……

東京創元社編集者・桂島浩輔が選ぶ2003年度「必読」ミステリー[■]

やだなぁ、今年のベストミステリなんていったらキャロル・オコンネルに決まってるじゃないですか。『クリスマスに少女は還る』[bk1]を読めばわかります、ぜったいに! …という戯言はオコンネルが出た年には毎回言ってるようのでおいといて、今年印象深かった…

いつのまにかT・R・ピアソン『甘美なる来世へ』[bk1]が出版されてる! 『愛の見切り発車』(柴田元幸)を読んだときからちょいと興味を惹かれてたのですよ。この本の中で柴田氏がピアソンを紹介した際、『甘美なる来世へ』*1を引用・翻訳しているのでちょっ…

なんだかんだいって『夜更けのエントロピー』(ダン・シモンズ)を黙々と読む。再読だろうがなんだろうが面白いものは面白い。週末ぐらいにはいろいろ書くと思います。今年は洋物の短編集の当たり年だなぁ。

フランク・ハーバートなら素直に『デューン』が安全です、…『砂丘の子供たち』までなら。息子さんのブライアン・ハーバートは最近デューンのプレ・シリーズを共著で出してますが、一昔前にも『消えたサンフランシスコ』という本を出しております。宇宙人の学…

殊能将之さんが日誌でフランク・ハーバート『ドサディ実験星』に言及してますな。これもたいそうなゲテモノ、『鞭打たれる星』と一緒にどうぞ。ちょっと前にカヴァーを変えて再販されたから比較的手に入りやすいかも。ゲテモノなので口当たりも悪いし食中り…

『東京サッカーパンチ』からのつながりで再読してみた『スターシップと俳句』。これと『キャッチワールド』(クリス・ボイス)、『禅(ゼン・ガン)銃』(バリントン・J・ベイリー)の三冊を立て続けに、SF初心者だったローティーンのころに読みました…そりゃ嗜…

月を二つに砕き世界中を壊滅させた"千年紀大戦"。廃墟とフリークスで埋め尽くされた地球上で、日本は奇跡的に国家として存続していた。大戦以前にロシアで作られたスターシップによる星間移民によって人類のフィジカルなサバイバルを目指す"生存大臣イシダ"…

ダン・シモンズ『夜更けのエントロピー』は初訳が一編だけか、うむむむむむむむ。けっこう切ない。

押入れから武田百合子『富士日記』『犬が星見た』発掘、ついでに澁澤龍彦『サド復活』も掘り起こす。前者はぼくの青春の書(笑)、高校生のころ寝る前に少しづつ読んでいったものです。某所で話題にでたので懐かしくなってサルベージ。…日記ものはほかにアナイ…

週末はずーっと『スターシップと俳句』の再読です、って言うかまだ読んでます、相変わらず楽しいのですよ。あとはキャリントンとかソローキンとか『パサージュ論』とか『怪盗ニック』とかの短編群を拾い読み。 『廃墟の歌声』『夜更けのエントロピー』『アヒ…

あぁ、やっぱり『8』(キャサリン・ネヴィル)は面白いのです。パラパラめくるだけのつもりだったのにじっくり読むはめに。 『8』は過去パートと現代パートに分かれてて、過去パートは [これ]とか[これ]みたいな話(笑)。キーアイテムを"宇宙を動かすほどの…

やっぱりヒロインが周囲に流されるがままで、自分自身の意思による行動がほとんどないところがダメなのかな、ってのは『マジック・サークル』(キャサリン・ネヴィル)の話。…あちこち引きずり回されて、おじいちゃんやおばあちゃんや、いかにも怪しい色男から…

髪を切ってきたついでに、久しぶりに本屋に立ち寄った。ネット書店を使うようになってからは普通の書店とは縁遠くなっていたけど、やっぱり一度入ってしまうと時間の許す限り本を眺めてしまう、うん。というわけで、ハヤカワのファンタジイ・フェアで重版さ…

キャサリン・ネヴィル『マジック・サークル』読了・・・ 『8』より派手だけど『8』より面白くなかった。なぜ?。気になるので『8』をぱらりぱらりと再読します。

関戸克己作品に対して:関口巽のモデルらしいとうわさされたためか、どこか神経質で陰湿な作品なのかなと考えていたのだけれど、幻想に対してはじつにあっけらかんと受け入れていて、関口巽が抱くような"世界を侵犯するものへの恐れ/畏れ"が抜け落ちている印…

関戸克己『小説・読書生活』[bk1]

「小説・読書生活」:自動記述とかデペイズマンとか口走りそうでした。こんなにまっとうなシュールレアリズム小説を目にするのも久しぶりっていう感じの小エピソード群で構成された第1章。正直この調子で100頁超を読まされるのはかなわないなぁとか考えてい…

『僕は天使の羽根を踏まない』に関する追記。ガジェットの回収をなおざりにして、主人公たちの物語だけに落とし前をつけたところはエヴァみたいだ、とか言ったら大塚英志は怒るかしらん?それとも思う壺?どうせなら『天使編』に決着してほしかった。

http://d.hatena.ne.jp/kosekei/20031116 一人称形式でも"私立探偵小説"的なものと"私小説"的なものではその性質はけっこう違うんじゃないかな、とか考える生業。酒見賢一『語り手の事情』とかジェイムズ・エルロイ『ホワイト・ジャズ』とかが思い浮かんだり…

山田風太郎は長編やエセーはおさえてても、短編は今まで読んでなかった。うん、これから集めていくつもりです。

山田風太郎「厨子家の悪霊」(光文社文庫『眼中の悪魔』収録)、なるほどこれは目が廻る。→このドンデン返しの連続はコリン・デクスターの長編をそのまま短編にした感じかとも思ったが、むしろ「レイダース・失われた聖櫃」的というべきか。危機また危機の連…

山田風太郎「眼中の悪魔」(光文社文庫『眼中の悪魔』収録)を読む。第一感、京極夏彦みたい・・・とか言って、はははは。もちろんこんな感想は倒錯してる、っていうか京極夏彦をはじめて読んだときに感じたのが”ずいぶん「新青年」っぽいアナクロな作家だな…

大塚英志『僕は天使の羽根を踏まない』[bk1]

書き下ろしの後半部は、思っていたとおり、乱暴に書きなぐられたような粗筋と脇役陣のとってつけたようなエピソード、そして体裁を整えただけの結末。まぁそれは大塚小説を読むときはいつも感じることで、「とりあえず書きました」という感じのするぶっきら…

『きみとぼくの壊れた世界』[bk1]

これは西尾維新による佐藤友哉トリビュートですな。近親相姦的、性に関するコンプレックス、エロゲめいた趣向とフラジャイルなラスト・・・。それでもこの小説がまぎれもなく西尾テイストなのは、主役をはじめとする登場人物の饒舌さが今までの作品と共通し…

西尾維新の新作を読んでいないとおちおちサイト巡回もできないのでこの週末には読みます、さくっと。