やっぱりヒロインが周囲に流されるがままで、自分自身の意思による行動がほとんどないところがダメなのかな、ってのは『マジック・サークル』(キャサリン・ネヴィル)の話。…あちこち引きずり回されて、おじいちゃんやおばあちゃんや、いかにも怪しい色男からヒロインが従兄の遺産として受け取るはめになった文書やヒロイン自身の家系・出自についての(雑誌「ムー」MMRも真っ青の)トリビアルな話を聞いてへぇーへぇーへぇー、その挙句最後には一番いい役目を任される・・・と乱暴にまとめるとこんな風になる。うーん、主役たるものもう少し苦労したっていいんじゃぁないかな。
 でも、訳者あとがきに触れてあるように、キリストの聖遺物、ギリシアやチュートンの神々、ソロモン、アレクサンドロス大王チンギス・ハーンテンプル騎士団、カスパー・ハウザー、ヒトラー、ニコライ・レーリヒ、アレイスター・クロウリー、グルジィエフ、ニコラ・テスラ他…詰めに詰め込んだ挿話を強引に纏め上げた力技は確かに一見の価値はあります。仕掛けと謎の構成に力を入れすぎて、物語のことまで手がまわらなかったんでしょう、多分。