東京創元社編集者・桂島浩輔が選ぶ2003年度「必読」ミステリー[■]
やだなぁ、今年のベストミステリなんていったらキャロル・オコンネルに決まってるじゃないですか。『クリスマスに少女は還る』[bk1]を読めばわかります、ぜったいに!
…という戯言はオコンネルが出た年には毎回言ってるようのでおいといて、今年印象深かったミステリは『拳銃猿』[bk1]『鉤』[bk1]『ボストン、沈黙の街』[bk1]あたり。
『拳銃猿』はガン・アクション・ノヴェル。ノワールのような鬱屈したところはなく、絆と熱と不屈をもったガン・モンキーのフックの効いた活躍が見事。映像的なセンスの作品ではあるのだけども、実際映画化するとなれば相当な達者の手でなければ文章に負けてしまうでしょう、一気読みの快作。
ウェストレイクは何を読んでも面白い、こういう人を達人と呼ぶのでしょう。『鉤』はゴーストライトをめぐるコメディ、もちろん苦ーいブラック。
『ボストン、沈黙の街』は年末ベストミステリ投票で『半身』と一騎打ちというのがぼくの予想*1。陰惨な予兆漂うオープニング、田舎町の若き警察署長のビルドゥングス・ロマンめいた事件捜査、ラストシーンの余情、…もうメロメロなのです。『半身』は雰囲気満点、趣向も面白いのですがもうすこしあからさまなエロスが欲しかったな。(笑)
*1:このミスなんかは新人の力作には票が集まりやすいし。