ギジェルモ・マルティネス『オックスフォード連続殺人』[扶桑社ミステリー文庫]を堪能する。さまざまのミステリ/ミステリ読みの暗喩でありかつ揶揄でもある衒学的挿話の数々を対位させることによって、主旋律であるところの、ある既存のミステリに使われているきわめて単純しかしながらとびきりのけれんであった趣向が本来的に持つはずだった/持つべきであった、ミステリに対するアンチテーゼ性を顕わにしているようで、たいそうな興奮のもと読了した次第。小粒ながらも味わいある一品といえるのではないかしらん。まあパズル・ミステリとしての演出がやや淡白なので、下手をすると最もつまらない読み方をされてしまうような気がしないでもないけれど。