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帰郷先で発掘したなつかしの一品。「この世にシングル・プレイヤーを圧倒する数のダブルボギー・ゴルファーが存在するそのわけは、神がこれを愛しているからにほかならない」えーと、それはそうなんだけど(笑)、なんでそこからマルクス・アウレリウスや聖…
要するに読んでいない本について語るときには堂々としていればいいという事ですね、わかります。さまざまなテクストをバスター・キートンのようなすまし顔で曲芸的に援用して怠惰の弁明/正当化をするさまは『バートルビーと仲間たち』と同類と言えるし(ただ…
嫌味と皮肉を優雅と軽妙でユーモアに昇華させた筆致によって描かれた、傲慢、嫉妬、貪欲、独りよがり等々小市民的な人間的特性をもつ人物たちが織り成す、英国にかつて存在しそして失われてしまった“魔法”を復活させるこのタペストリは、たとえばジェイン・…
「あなたに毒を盛ったわ。死にたくなければ私の傍にいて」という言葉がアンテナに引っかかったのでゴーストの囁きにしたがって買った読んだ斜め上だった。反応したのは妖怪アンテナだったらしい。奇天烈なガジェット、ネジのゆるんだ/はずれた/いかれた人物…
全体主義的な世界を「楽園」として考える閉塞したひとりの人間が、自己を映す鏡としての他者を自覚することによって、罪を知り、恥を知り、おのれ自身によって罰を被る物語としてとらえれば、『カロカイン』を聖書における知恵の実の挿話の変奏と取ることも…
基本、タブロイド誌の一コマ漫画みたいにゲラゲラ笑いながら読み飛ばすユーモア&アイロニーではあるけれど、懐は思った以上に深い。異語によって書かれた辞書と、そこに書かれている言葉の意味を理解しないままに辞書を解釈して悦に入る(外部と隔絶された…
原因のわからないままに迫害される中年女性の物語は、どこか村上春樹を思わせるところがないではないけれども、もっと切実で、もっと手がかりを持たない。あからさまに物事の因と核の描写を避けつつも暗示することは忘れず、結果すらあいまいに放擲しつつも…
物体Xでエイリアンでゾンビでブロブで寄生獣、そしてどう見てもバルタン星人です本当にありがとうござい以下略なクリーチャーまでもが登場するモンスターパニックもののどう考えてもネタ本であるはずなのに、アイデアをとことん暴走させたあげくとんでもない…
再読。クレストには知性派抒情派にまじってときどき野性派がいるけど、アンソニー・ドーアはその繊細な野性派。『美女と野獣』の野獣、もしくは輻輳していないシマトラ(こと島田虎之介)。無骨でシンプルで、それゆえ力強くパーカッシヴな(自然の)描写が…
東京創元社 文庫創刊50周年記念 復刊リクエスト募集のご案内ということで、なんともタイムリー。さあトム・フランクリン『密猟者たち』に投票しよう。創元コンテンポラリはこれだけに限らず、ジャンルをはみ出してしまったりオフビートだったりイキのいい現…
『エドガー賞全集1990−2007』の収録作を見たらトム・フランクリン「密猟者たち」が載っていた…そういえばこれもMWAだっけと思いつつまた読み直して、そしてまたため息をつく。いやまったくこの感想を書いたとき以来、この作品を表題作とした短編集は…
あ、うちにも「本棚をみせてほしい」とのトラックバックが来ていましたが、デジカメをもっていないのでさらせません…って言うか→ うちに本棚らしい本棚はもうありません。文庫本はティッシュペーパーの空き箱、単行本はamazonやuniqloなど手近の空き箱につめ…
先達へのオマージュやリスペクト、愛着しているものを使った遊びはそこかしこに見受けられるも、そこには衒学に淫しようとする気配はまったく感じられない。これ見よがしなガジェットを持ち出すことも無く、いたずらにプロットをひねることもしない。言葉使…
こんなことを書いていてなんだけど、ジョー・ヒルの『20世紀の幽霊たち』はこの水準さえも越えてしまう作品集かもしれないな、と冒頭数編を読んで思う。
今年、もしこれ以上に面白い作品が出るとしたら、年末ランキング戦線はずいぶん賑やかなものになるんじゃないかな。『闇の奥へ』(クレイグ・トーマス)を思い出させる緊張感を持った冒険小説ではあるのだけれど、むしろ、人間的存在の意義を乱す“精神異常に…
ようやくジョン・クロウリー『エンジン・サマー』改訳版が10月か11月に刊行されるらしいので「ほほう」と思い、ふとamazonで検索したらばThe Aegypt Cycleの第4部"Endless Things"のペーパーバックが年末予定になっているのを見、ついカッとなって"The Solit…
三池崇史のようなジャンクフィクションだった『The Book With No Name』のあと、似たようなものを読みたくなってジェームズ・ロリンズ『ナチの亡霊』を手に取る→「量子力学と進化論とインテリジェントデザインとetc.…を組み合わせた釣鐘のアイデアは豪快で、…
自分の役割を観客に明示するかのようにして登場し、いささか大げさな身振りと台詞で場を作り上げていく人物たちのふるまいからみても、この小説はあからさまに演劇的な結構をしている。演劇的であるということはすなわち政治的であるといってしまってもいい…
溶けるような暑さにまいっていたので頭を使う読書は最近ぜんぜんしていない。『ヨーロッパ戦後史』とか『幻想の過去』とか『ポル・ポト』とか亀山郁夫のスターリノロジーものとかのジャーナリスティックなものばかりを読んでいた。どれも分厚いのでいいトレ…
ハヤカワ・オンライン近刊予定をみるとデニス・ルヘイン、ポール・アルテ、高野史緒、ヴォネガットともに、中篇「たったひとつの冴えたやりかた」の単行本化が載っていたので、ちょっとティプトリーを再読していこうかしらね。
この物語は、さしあたって、身の内に(異なる位相で複数の)モンスターを棲まわせた犬によって伝播される呪いの物語、すなわちホラーといってもいい結構をもっている。ただ、そのモンスターも呪いも明確に“現実”の枠内に規定され、良くできた恋愛小説のよう…
人と人の住む集まりのあいだを行き交い踏みしめられ、“人間的”な交流の証として形成される“道”。道をたどることとはすなわち人をたどること、その道程を描くのがいわゆるロードノヴェルだと仮定すれば、人がヒトという名の獣へと変貌しつつある『ザ・ロード…
存分に愉しむ、大満足。あらゆるものを見ることで帰納的に世界の法則を身につけていったフンボルトは、世界を誰よりも知っているのに世間を知らず、卓越した算能によって世界の法則を直感してそこから事象を演繹していくガウスは、法則を誰よりも理解できる…
ポー、ラヴクラフト、ジョン・ディー等あざといネタを盛り込んだ『ボルヘスと不死のオランウータン』は、事件の謎自体はすぐわかるし、その真相をあからさまに迂回しながら繰り広げられる論議はちょっとしたサロントーク以上のものではないけれど、物語全体…
じっくりゆっくり読む。I'm not here. This isn't happening.…というRadioheadの“How to Disappear Completely”の詩を、読んでいる間中ずっと思い浮かべていた。終末を際とした地の荒涼と暴露されるヒトの蛮性を忌避するがごとく、事象と心象がシームレスで…
たとい死んでも、自分のことを知っている人が生きている限り、とどまることのできる街がある…という設定からはいろいろな思考実験ができそうなものだけどなあ、ちょっともったいないんじゃないかしらん。とは思ったものの、最後の人間として(知らないうちに…
『桜庭一樹読書日記』を再読する(一度目は当然web)。“中学生のころの全能感の滓がどこかに残っているのか、なんとなく、毎回、ふっつうの自分にがっかりする。きっともっとずっとマニアックな人でいてほしいのだろう。大人になった、自分という女性に。そ…
で、菊地秀行『インベーダー・ストリート』を注文したった。元本(『風の名はアムネジア』『インベーダー・サマー』)を持ってるのでどうしようかと思ってたんだけどね。あと岡田剛の『ゴスペラー』は見かけたら買っておいたほうがいいと思うのだ。
読了ニコール・クラウス『ヒストリー・オブ・ラヴ』。泣く。
誰もが気になる(笑)ジャック・カーリイ2作目『デス・コレクターズ』が、前作のような悶絶ホワイダニットのようなウリ(笑)がないにもかかわらず、予想以上に(笑)面白かった。とはいえ『百番目の男』も、キャラクター造型の確かさとちょっとした嫌味と皮…