森奈津子『からくりアンモラル』[bk1]

エゴイスティックでナルシスト、肥大した自己と強い被害者意識…アドレッセンスに棲む少女たちはいつも我儘で、それゆえに人を惹きつけもするし嫌われもする。本書は、そんな少女たちの性のイニシエーションをセンチメントで嫌味なくつつんだ作品集です。あからさまにエロティックな描写がありますが、性行為が快楽を得るためというよりは世界から疎外され傷ついた自分自身を慰撫するための、いわばオナニーめいたものとして描かれているため、読んでいてこちらが欲情するってことはあまりありません。作中のSF的ガジェット…ロボット、時間移動、吸血鬼、動物とのハイブリッド人間、テレパス…等が、たとえばコニー・ウィリスの「わが愛しき娘たちよ」の異星生物にたくされたようなジェンダー批判を負う様なことは無く、性的ファンタシィをみたすネタとして扱われてるところも、内容が願望充足のオナニーっぽく感じられた原因かもしれません。装丁のタカノ綾が描く、おおきな眼とまんまるの瞳とちいさなおちょぼ口と棒のような身体つきの人物像はなんだかダッチワイフを思わせて、その意味ではベストマッチですね。『独身者の機械』の系譜に入れたい佳作ぞろい。