デニス・ルヘイン『シャッター・アイランド』[bk1]

なかなか面白かった。孤島、密室、暗号、精神病院、もし講談社ノベルスから出版されていたら完璧に新本格(笑)。いやこれで最終章が袋綴じでなければもっと素直に驚けたかも。『Yの悲劇』の犯人像の意外さを事前に知っていたために、かえってすぐに犯人が分かってしまったというようなことを『夜明けの睡魔』で瀬戸川猛資さんが書いてましたが…いやはやなんともそういう感じ。まぁ驚けるかどうかはともかく、この趣向はルヘインの作品に共通する、人の内側に潜む怪物性というテーマをより強烈に演出するための方法として捉えればいいのでしょう。実際、真相が明かされるまでのサスペンスよりも、真相が明かされてから後に湧きあがってくるエモーションのほうが、ぼくには、より興味深かった。