ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』

要するに読んでいない本について語るときには堂々としていればいいという事ですね、わかります。さまざまなテクストをバスター・キートンのようなすまし顔で曲芸的に援用して怠惰の弁明/正当化をするさまは『バートルビーと仲間たち』と同類と言えるし(ただしもっとふざけている)、“読んでいないほうが本について語ることが出来るのだ!”という逆説を例証していく愉悦はチェスタトンの末裔とも言える。まっことゲラゲラ笑いながら読める本であるし、油断していると逆説が本質を照射するようなところも現われてハッとする点もあるけれど、結局は“からめ手”であり“いなし”であって、“読んでいない本について語るひと”を勇気付けることはできても、“読んでいない本の内容を批評するひと(笑)”の理論武装にはならないんじゃないかな。唯野教授とかマンソンジュ氏のような実験文芸として読むのが吉。