アンソニー・ドーア『シェル・コレクター』

再読。クレストには知性派抒情派にまじってときどき野性派がいるけど、アンソニー・ドーアはその繊細な野性派。『美女と野獣』の野獣、もしくは輻輳していないシマトラ(こと島田虎之介)。無骨でシンプルで、それゆえ力強くパーカッシヴな(自然の)描写が世界にあまねく潜在/偏在する異世界を輪郭し、その異世界に魅せられる人びと、畏怖する人びとを、ときにスピリチュアルに、ときに神話的に語るその肌触りはとてもリッチ。