東京創元社 文庫創刊50周年記念 復刊リクエスト募集のご案内ということで、なんともタイムリー。さあトム・フランクリン『密猟者たち』に投票しよう。創元コンテンポラリはこれだけに限らず、ジャンルをはみ出してしまったりオフビートだったりイキのいい現代小説ばかりで、フランチェスカ・リア・ブロック以外が全滅と言うのは本当にもったいない事態であります。
さて、そのほかにリクエストしたいものSF編。P・K・ディックJ・G・バラードは全部買えるようにしておくべきだろうし、ダーコーヴァ年代記やソヴィエト産スペースオペラセルゲイ・スニェーゴフ『銀河の破壊者』『ペルセウス座侵攻』『逆時間の環』も、それをいうならヴァン・ヴォクトも全部(とは言わないまでも非Aと武器店ぐらいは…)押さえたい。リチャード・A・ルポフ『神の剣悪魔の剣』なんて復刊されたら喜ぶのはオレ以外何人いるだろうかとか、ブライアン・W・オールディスウォルター・ミラーJrロバート・シルヴァーバーグという渋いところも不足しがちな栄養分として補給すべきだし、ジュディス・メリルのアンソロジーもできれば全部…といいたいところをぐっと抑えて厳選してみる。
ロバート・A・ハインライン『ルナ・ゲートの彼方』ハインラインは代表作と呼ばれているものよりジュヴナイルのほうがぜったい面白い。なかでもこれが一番お気に入り。無限のリヴァイアスで殺伐とした人は読むべきで、これぐらいのことは、もうこの時代にハインラインがとっくにやり終えているのだ…っていうか何でこれがいまだに品切れなんですかと小一時間以下略。追記:あ、増刷されてんだ。ほんとだ! じゃあ、ジャック・ヴァンス<冒険の惑星>4部作と差し替えに。
ニーヴン&パーネル『神の目の小さな塵―一大SF巨編エンターテインメントを書かせたらこのコンビに限る…と言ってたのは一昔もふた昔もまえのこと。いまではデイヴィッド・ブリンもヴァーナー・ヴィンジもいるし、ニュー・スペースオペラと呼ばれている作品群もある。いい時代になったもんだと思いつつ、でもアレステア・レナルズのレンガ本が、厚さのわりに中身が薄いと嘆くような人はこれを読むべき。
フランク・ハーバート『鞭打たれる星』『ドサディ実験室』ワイドスクリーンバロックの最も重要な要素は変態性だと思うのですが、いかがか? その点フランク・ハーバートは代表作デューンでさえ相当変態が入っている。本来的にSFがもっているはずの変態性と低俗性は、いったいどのようなレヴェルにまで昇華できるのだろうか…という問いの答えを確かめたいひとはこのジャンプドアを読むべき。そういう意味ではバリントン・J・ベイリーと同じタイプかな…あ、ベイリーもちゃんと復刊してくれなきゃ。
ジョン・ヴァーリイバービーはなぜ殺される』サイバーパンクは別に新しいSFでもなんでもない。テクノロジーによって変貌し、それが日常化した世界における人間的存在のプロファイリングをすると言う、いってみればハインラインの未来史を根に持つ伝統的SFを、ただラディカルに書いたというものだと思っている。そのハインラインサイバーパンク間を繋ぐのがジョン・ヴァーリイで、SF史を俯瞰したいならば絶対に読むべき重要な人だし、そんなことを考えなくてもミステリ読みにも受けそうな趣向を屈託なく盛り込んだ短編群は文句なく楽しい。
マイク・レズニックサンティアゴ/はるかなる未来の叙事詩―『アイヴォリー』『キリンヤガ』を読んで、レズニックを感動的だけど説教くさい作品を書く人だと思い込んでいるならこれを読むべき。宇宙をまたに駆けるウェスタン絵巻…とにかくかっこいい。
とまあこんなところかしらん。