ビーケーワンより


国書刊行会 『緑のヴェール』 ジェフリー・フォード/貞奴金原瑞人訳 6/- \2,625 

論創社 『座長ブルースコン』 トーマス・ベルンハルト 5/- \1,680 
論創社 『ヘルデンプラッツ』 トーマス・ベルンハルト 5/- \1,680 

ワニマガジン社 『回螺』 安倍吉俊 6/- \2,625 

トーマス・ベルンハルトの戯曲がようやっと登場の巻。で、向井豊昭『怪道をゆく』は、本来正確無比であるべき(なのに虚航船団的に狂った)カー・ナヴィゲーションに導かれる異質な世界へのロードノヴェルとでも言うべきか。カーナヴィの予告音が仏壇の鈴のような音を出すというところから死界/霊界参入の趣もあり、死後≒過ぎ去ったものの住まう場所と考えればこれすなわち過去/歴史への旅であったり、ラファティスラップスティックを思わせるところもあり、ついこの間まで『コンゴ・ジャーニー』に憑かれていたのでエイモス・チェツォーラ『やし酒飲み』の奔放なアニミズム世界を思い出したり、山下洋輔の『ドバラダ門』や島田虎之介の諸作を連想したり、そのほかにもきわめて多層/多角な批評的読みの誘発を挑発する傑作。単行本未収録の作品群もぜひ本にしていただきたい。