本やタウン:書籍近刊情報より


:鳥影社 『ざくろの実 アメリカ女流作家怪奇小説選』 イーデス・ウォートンほか/梅田正彦訳 6/上 \1,680 ((ピューリッツァー賞作家の表題作、O・ヘンリー賞受賞作など怪奇小説黄金時代に輝いたアメリカ女流作家8人の傑作選。))
:鳥影社 『否定の詩学 カフカの散文における物語創造の意志と原理』 尾張充典 6/上 \3,675 ((生と文学が密接にからみあったカフカの仕事の意図(物語の無化と消失)を、具体的な作品の詳細な分析を通して探る。))

:研究社 『転回するモダン イギリス戦間期の文化と文学』 遠藤不比人、大田信良編 6/下 \3,990 ((帝国・科学・ジェンダーメトロポリス・身体などの視点から英国大戦間期の「モダニズム」を歴史化し新たなモダニズム像を提出する。))

国書刊行会 『老魔法使い 種村季弘遺稿翻訳集』 フリードリヒ・グラウザー/種村季弘訳 6/25 \3,780 
国書刊行会 『美術史5 近代美術II』 エリー・フォール/與謝野文子訳 6/25 \5,040 

ポプラ社 『てのひら怪談(3)』 加門七海ほか 6/中 \1,260 

訳者が同じだからというわけでもないけど、クレイグ・クレベンジャー『曲芸師のハンドブック』とジェイムズ・グレイディ『狂犬は眠らない』はちょっと気かかっているところが共通している。どちらもフリーキーさをフックにしてはいるのに、読みどころはむしろ奇矯な行動をするようになるに至ったルーツへと遡行するというところであって、それはそれでドライヴ感のある味わい深い切なくも立派な物語ではあるのだけれど、オレ的にはむしろ薬が切れてトチ狂った後の無軌道さや精神鑑定医との心理ゲームが暴走することを期待していたわけで、そーいうところで読みのチューニングがちょっと違ってしまったかな、の感がある…もったいない。その点アーヴィング・ウェルシュ『シークレット・オブ・ベッドルーム』は物事の“因”であるところのルーツはオチで決着すればいいとばかりに、因果の“果”をいかに派手に展開するかに懸けた「いいぞもっとやれ」感のある怪作。人を呪わば穴二つとはよう言ったもので、環境衛生局のエリートだけどアル中のダニーとゲームオタクの童貞の新人局員ブライアンが互いに嫌悪しあう第一部はぎすぎすしたテンションの実にいやったらしい話なのだけど、第二部以降ギアが決定的に上がるギミックが出てくる…っていうか終わりのない下り坂でブレーキが壊れてしまうという感じでいやったらしさがどんどんどんどん加速していくまさにダウンワードスパイラルのデュオ。何が起きるのかは訳者あとがきで、わりとさらりと、しかしばっちり書かれているので気になるかたはご注意を。