e-honもうすぐ出る本の予約より


ミリオン出版 『廃墟本 2』 中田薫/中筋純写真 4/23 \1,890 

文藝春秋 『灘の男』 車谷長吉 5/1 \1,575 
文藝春秋 『うつつ・うつら』 赤染晶子 5/1 \1,230 
文藝春秋 『幽霊を捕まえようとした科学者たち』 デボラ・ブラム/鈴木恵訳 5/1 \2,310 
文藝春秋 『ふたつめの月』 近藤史恵 5/20 \1,575 
文藝春秋 『鯨の王』 藤崎慎吾 5/20 \2,000 
文藝春秋 『作品&エッセイ集 遠い視線 近い視点』 横尾忠則 5/20 \3,675 
文藝春秋 『バチカンエクソシスト』 トレイシー・ウイルキンソン/矢口誠訳 5/20 \2,000 
文藝春秋 『終生ヒトのオスは飼わず』 米原万里 5/20 \1,470 
文藝春秋 『二十世紀』 海野弘 5/20 \3,360 

おもに文藝春秋。『幽霊を捕まえようとした科学者たち』『鯨の王』『バチカンエクソシスト』とタイトルだけで催してしまいそうではあるけれど、文藝春秋といえば今のオレにはジャネット・ターナー・ホスピタル『暗号名サラマンダー』なのだ。いや凄い本を読んでしまった。主旋律となるのは過去にテロにかかわった二人のサバイバーの、かたや事実から目をそむけながら過去にとらわれる男、かたや自棄的といっていいほどテロの真実に偏執する女のエピソードで、そしてテロ当時のエピソードがそれを補完するように挿まれる。しかしその主旋律の背後で可聴域を超えたベース&バスドラムのごとく強制/脅迫的に腑を撃ち鼓動を速め手に汗をにじませる超低音のリズムとして、この小説の原題“ペストに対する十全の備え”というテーゼが不穏に通底している。避けがたい災厄として黒死病に比喩されたテロリズム、そしてそれに対して十全に備えるという事がどういうことなのか…そのおぞましさといたましさは5章以降、テーゼの輪郭が明確になり可聴域へと変調した瞬間から濃密な瘴気のような禍々しさになっていく。息をこんなにもつめて小説を読んだのも久しぶりのことで、読後思い出したのが(この前に小田切博『戦争はいかに「マンガ」を変えるか』を読んでたせいもあって)アラン・ムーアウォッチメン』のあのアポカリプティックな印象だった。