麻耶雄嵩神様ゲーム』の悪趣味さは昔話のケレンに通じるんじゃないかな…と考えれば別にこれ子供に読ませたって問題なんてないんじゃないとか思ってしまう。だいたい子供の感性と度胸と好奇心と虚勢を甘く見すぎなんじゃないかと小一時間…とかいろいろ考えてたら唐突に無性に後味の悪い小説を読みたくなったのでロバート・コーミア『チョコレート戦争』を引っ張り出してくる。チョコレートを50個売らなければならないというしきたりのある学園に入学した新一年生の誇り高き反抗をめぐる青春の希望と残酷を書ききったこの小説は、ヤングアダルトの流れを変えたメルクマールでありなおかつ「こんな本を多感なティーンエイジャーの読ませていいものか」と図書館から締め出されてしまったといういわくも持つ問題作。実際読んでいる間これほど鼓動が激しく打ち続けた経験は少ないし、読み終えた後これほどの敗北感を覚えた体験もない。プロット/スタイルの緊張感も強烈で、個人的には『隣の家の少女』とならぶ厭系YAの傑作。現在は扶桑社ミステリー文庫から『チョコレート・ウォー』[bk1/amazon]として入手可、続編の『果てしなき反抗』もさらに苛烈なヤングアダルトノワールではあるのだけれどこれは新刊としては入手できない模様で実に惜しい。というか『フェイド』『ぼくが死んだ朝』なんかも新本格/ポスト新本格系を思わせる設定で、その手が好きそうな人にはなかなか興味を引くであろう作品なんですけれどね、これも品切れ。