年末年始は…
いつもどおり隆慶一郎。今回は短編集『柳生非情剣』[bk1]に。理由は須賀しのぶの新作に柳生連也斎がでてるとのことが頭にあったから。とはいえ連也斎こと柳生兵介の登場する冒頭作「慶安御前試合」は短編集中ではもっとも平凡といってもいい作品ではある。絶品なのは徳川家光の小姓として(下賎な言い方をすれば同性の愛人として)仕えた柳生友矩の生き様を極北の同性愛小説として描いた「柳枝の剣」と、歴史上では凡庸極まりない剣士としての評価をされている柳生宗冬すがすがしいまでの諦めっぷりがたいそうすばらしい「ぼうふらの剣」の2編。これを前にしては神速鬼神を斬り裂くがごとき柳生十兵衛なぞただの剣バカにしか見えない。あとは戦場で腰骨を砕かれまともに歩行できなくなった柳生新次郎の絶望と復活を描く「跛行の剣」が壮絶。