平山瑞穂『ラス・マンチャス通信』[新潮社][bk1]

悪臭紛々たる「陸魚」を一番のお気に入りのおもちゃにしてる「アレ」が徘徊する家に住む少年が、レイプされようとしている姉を助けるために「アレ」を殴り殺してしまったために施設に入れられてしまうまでを描いた最初の章「畳の兄」が絶品。諦観と退廃の雰囲気と、妄想としてしか現実を捉えることができない少年のいびつな視線がグロテスク趣味を存分に満足させてくれる。とはいえ2章以降は、施設に入れられてしまったためにまともな職に就くことのできなくなった少年の、デッドエンドでダウナーな裏サラリーマンとしての閉塞したデイズオブライフが主眼となって、妄想/幻想の割合が激減してしまうのが残念なところ。次回作にはかなり期待したい。