ティエリー・ジョンケ『蜘蛛の微笑』[bk1]

他の男に鞭打たれ激しく犯される自分の愛人の姿をマジックミラー越しに眺め、嗤いをうかべる外科医。金を手にすることは出来たものの、手配書が回されて身動きの取れなくなった銀行強盗。ある日突然理由も判らず囚われ、手足の鎖に自由を奪われ、自分の排泄物にまみれ、恐れと飢えと渇きに自己の尊厳を失い、薬漬けにされる青年。この3つのプロットが、神の手に絡め取られたかのように1つのクライマックスへと織りあわされる。これ以上は訳者の意向を尊重して言及は避けるけれど…それにしてもちょっとしたノヴェラ(百数十頁にスカスカの字間)程度の分量とは思えないじわりと重く、鮮烈な読後感。江戸川乱歩か『GOTH』の乙一か…とにかくその手の変態小説に目が無い人は必読でしょう。