村崎友『風の歌、星の口笛』[bk1]

1:すべてが機械化されマムと呼ばれる存在に管理されている世界で、壊れるはずの無いロボットペットが動かなくなる事件を皮切りに、この世界の秘密にかかわることになる探偵。2:ある目的のため存在する惑星プシュケに250年の時をかけてたどりついた調査員がそこで見つけたものは、すでに砂漠化した惑星の姿と、そこに残っていた閉ざされた箱型の人造建物の内部の天井に焼き付けられた人型の影だった。3:事故からの回復を機に、恋人に結婚を申し込むために彼女の家におもむいた青年がそこで出会ったのは、彼女の母親と、彼女と同じ名前を持つ赤ん坊だけだった。
パンチとハッタリの効いた3つのプロットとよどみのない物語展開、いやぁ面白かったですね、ホント。→ 記憶ピアス ←のような重要なガジェットが中盤あたりでいきなり出てきて、おいおいそんなのはもうちょっと早めに提示しておくものじゃないのかいとか思ったり、そのほかにも細かいことはいろいろ言いたいことはあるのだけれど、そんなのどうでもいい、ホントどうでもいい。ミステリなんて銘打たれてるけれどまぎれもないSF、それも無駄に壮大な設定としのびよる破滅の予兆、クリフォード・D・シマックや光瀬龍のような遥かさの、レトロスペクティヴなロマンティシズムの遺伝子を受け継いだオールドタイプのSF。いまどきこんなのが読めるとは夢にも思わなかった、感激の涙がチョチョ切れそうです。→ 『チグリスとユーフラテス』[bk1] ←と比較しても面白いでしょう。
あ、それから坂東真砂子の選評はピントがハズレてるとしか思えないし、なにより激しくネタバレなので、はじめに目を通してはダメです。