サラ・ウォーターズ『荊の城』[bk1]

第2部以降怒涛の展開、それこそ運命の女神が目を瞑って指をぱちんと鳴らすたびに主人公の少女たちが翻弄されていきます。第1部は貧民窟の少女スウが、詐欺師の“紳士”による結婚詐欺の片棒を担ぐために赴いた城で令嬢モードと出会い心を通わせていくさまが書かれていて…でもここまでは割合単調で、正直いかがなものかとは思いましたが、2部3部と進むごとにどんどんプロットが充実していく。一発ネタを雰囲気だけでラストまで引っ張っていった『半身』よりも格段に物語性が増していて頁をめくる手が止まりませんでした。第2部はモードの視点で、事件に至るあらましと結果、そこから更に変転する運命が語られる。いやぁここで回想される城主の生業と少女にあてがわれた仕事の変態的なことといったら、18禁ゲームの館ものの如しであります。直接的なアレはないものの相当えろい。それになんといっても第3部の→ 精神病院 ←の場面のサディスティックなまでに執拗な描写に手が震え、全体を貫く濃厚なレズビアン風味にぞくぞく…じつにいやーらしいゴシックロマンスに仕上がってます。
それにしても主人公たちは終始手を代え品を代え何かに束縛されている…愛情、憎しみ、自分が受け継いだ血、家、陰謀、そして文字通り監禁、軟禁される。『半身』もそーいうお話だったし、そーいう場面になると作者の筆はどんどん艶っぽくエロティックになっていく。字面は結構上品なのに書いてることは相当下品、いやーサラ・ウォーターズ、相当好き者だと思いますね(←褒め言葉)。