『七姫物語 第2章』[bk1]
この作品、漢字が使われる東洋風の世界なのですが、ぼくの感じ取ったテイストはむしろヨーロピアン。それぞれに偽王として担ぎだされた七人の少女たちの、あたかもひとつの舞台劇のような、もしくはままごとのようなまつりごと/駆け引きの真ん中で、主人公空澄(カラスミ)の、少しの淫靡さをも含まない稚いエロスと、世界の肌触りを感じないではいられないような敏感さは、どこかビクトル・エリセの映画に出てくるようなアドゥレセンスの只中に棲む少女のふるまいを連想してしまいます。それは状況が次第に混迷さを匂わせはじめている今作にもじゅうぶんあらわれていて、この等身大の視線をなぞっているだけでぼくはもう相当に切ない。もちろん国取り物語だから、欺瞞、争い、貧困、ネガティヴな要素も多々見受けられますが、そういうものを書いてもブルーのフィルタを通して眺めるような静謐を失わない作者の筆致にはけっこう惚れこんでいて、おまけに描かれる街のたたずまいにベンヤミンの「ベルリンの幼年時代」を思い出しそうになるところも個人的なツボ…このシリーズ、次作も楽しみです。