小泉義之『生殖の哲学』[bk1]

ナチズムにおけるような優生学を批判してるのにサイボーグとかクローンとかの生態改造テクノロジーを推奨してるのはなんじゃいな、とかおもって読んでましたが、冒頭にちゃんと“生-権力を一部の者に独占させるのではなく、万人のために奪取すること”*1と書いてありました。結局のところこの本はアンチ権力のキャンペーン/アジテーションであって、そういう見方では威勢のいい啖呵がけっこうなドライヴ感を醸し出しているのだけれど、“生殖テクノロジー”が開放された以後の状況の考察がほとんど書かれていないのにはちょっと不満。“未来未来”と掛け声は高くても現状批判をおこなっているだけのようで、ぼくとしてはフリークスやモンスターと化した近未来の人類が闊歩する世界における倫理的社会的な変容に興味があっただけに、ちょっと拍子抜けでした。『塵クジラの海』[bk1]もでることだし、いちどブルース・スターリングの生体工作者/機械主義者シリーズを読み直そうかしらん。

*1:『生殖の哲学』p7