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↑発売されてる書籍リストを見ててびっくり。『風とともに去りぬ』やジョン・アーヴィングのような、アメリカ性を背景に家/家族と個/個人を主題とした物語性豊かなアメリカン・グランドロマンの系譜のなかでもまるでメインディッシュだけで構成されたフルコースのようなどっしり感で売っていた『潮流の王者』の著者パット・コンロイの名前を再び目にすることがあろうとは…あの頃の早川書房はピート・デクスターとかラッセル・バンクスとかマイケル・シェイボンとかいろんなアメリカ現代文学の紹介に熱心だったけど、文庫化したのってモナ・シンプソンぐらいじゃないかな(映画化のあおりで)。そろそろ品切れの海底からサルヴェージされてもいいんじゃない?
[単行本]
■■■:バジリコ 『失われた季節』 パット・コンロイ/竹迫仁子 \2,940 発売中
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先日読んだリーアム・キャラナン『漂流爆弾』[ハヤカワ文庫NV]も↓のようなアメリカン・ロマンの系譜の傍流に連なるだろう秀作だった。“日本軍が放った風船爆弾を発見して安全処理し、同時に日本軍のスパイを探し出せ”という内容紹介から喚起される勇壮なスペクタクルやサスペンスを期待する向きにはたしかにどこをどう読んでも面白くない小説でしかないだろうけど、これを“オブセッションとメランコリーのブレンドされた矮小さと酷薄さをもつ(主人公にとっては)絶対権力としての上官ガーリイ大尉”や“偽シャーマニックで微エキセントリックな謎の女リリー”と“18歳の少年兵”を愛憎綯い交ぜの擬似家族的ドラマととらえるととたんに面白みが浮かび上がってくる。そしてそれがアラスカという隔絶された閉鎖空間の中で、リアルからリアリティを剥奪したような、具体的でありながら確固とした手触りが感じられない、幻惑的といってもいいような奇妙な浮遊空間を作り上げ、寓意性に陥りそうな一歩手前の喜悲劇を見せてくれる。ロバート・F・ジョーンズの『ブラッド・スポーツ』やパトリック・オリアリーの諸作からファンタジックな要素を極力削減して、なおかつ作品そのものの手触りは残したような小説といってもいいかな。新潮社のクレスト・ブックスが好きな方にはお勧めしてみたい。