ビーケーワンより


講談社 『イタリア現代思想への招待』 岡田温司 6/- \1,575 

水声社 『演戯の精神史 バロックからヌーヴェルヴァーグまで』 矢橋透 6/- \2,625 

で、そのどちらかといえばわりと歯ごたえのあるちょっとめんどくさい(だがそれがいい)小説に属するジェフ・ライマン『エア』。訳者があとがきで警告しているように、主人公の“おばさん”としか言いようがない独りよがりな振る舞いはかなり不快指数が高い…が終盤四大元素の話が出てきたあたりでようやくこれがひとつの(再)創世神話であることに気がつく。なるほど世の東西を問わず神話的人物像というのは傍若無人に振舞うものだし、つねにファッションの最先端を求める主人公の態度/役割や、酸に焼かれ続け母体を危険にさらし続けながらも育ちゆくあの胎児なども実に寓意的だし、洪水の予言や冥界行等々ありとあらゆるものが神話的モチーフとして当てはめることができる。さらに、もしこの物語のすべてが最初のエア導入時のテストにおいてシステムの内部にとらわれてしまったひとり(もしくは二人)のインナースペースの出来事だったと仮定してみたとき、『ラナーク』において読み取ったのと同じように、煉獄的な内省と自己実現の物語として読み直してみるのも面白いかもしれない。でもまあそれはともかくオレ『夢の終わりに…』をとても好いているので早く文庫にしてくださいな。