ビーケーワンより


晶文社 『旅の仲間 澁澤龍彦堀内誠一往復書簡』 巖谷國士編 4/- \4,725 

水声社 『モスクワの声』 大石雅彦 2/- \2,520 

アンソロジー目当てで特集が新しい世界文学の『ユリイカ』を買うたった…面白そうだという話を聞いていたジョナサン・リテルの親がロバート・リテルということを知ってますますうずうずしてきたぞ。で、ジェイムズ・ミーク『ホワイト・ガーデンの幽鬼』を読む。題材は凄く好みだし、実際すごく面白い。ロシアの内戦とシベリアの極寒を背景に、そのあわいで生存するために剥き出しになった獣性と反動するように倫理と理想を信仰のように抱える人びと…強制収容所から抜け出すとき仲間を×××*1として連れる聖者のような知性を時おり見せるおとこ、戦いの蛮性という煩いのなかでその因を欲望に見いだしそれを断ち切るためにおのれを去勢するおとこ、極北の閉鎖系の中で暴君として振舞うおとこ…この世界は、まるで怪物のような聖性/聖者のような怪性が闊歩し、確固として物質的でありながらも一部のウェスタンにかいま見られるような神話/寓話的な要素が肥大してしまったかのような、人倫を平気で超えてしまうような問いを誘発する根源的混沌として設定されている。そこで演じられる作劇は、ただ、思索をやや安易に言葉として提示している部分があって、そこが幾分もったいないかと思う。

*1:非常食