本やタウン:書籍近刊情報より


以文社 『生のあやうさ』 ジュディス・バトラー/本橋哲也訳 7/31 \2,625 

岩波書店 『西田税と日本ファシズム運動』 堀真清 8/29 \8,400 ((膨大な一次資料と関係者への聞き取りから明らかにした、二二六事件の首謀者の本格的評伝。))

エスクァイアマガジンジャパン 『人間椅子』 江戸川乱歩/ヤン・シュヴァンクマイエル画 8/下 \2,625 ((『人間椅子』のために描かれたイラストにより、あの傑作短編がまったく新しく甦る。))

出版芸術社 『首吊少女亭』 北原尚彦 8/中 \1,575 ((数少ないヴィクトリアン・ホラーの名手として人気急上昇中の著者が紡ぎ出す12のロンドン幻想奇譚。新作「火星人秘録」収録。))

中央公論新社 『ドイツ文学者の蹉跌 ナチスの波にさらわれた教養人』 関楠生 8/10 \2,940 ((ナチス台頭とともにヘッセ、マン、ナチス文学の扱いについて変節を遂げたドイツ文学者の足跡を検証、もう一つの戦争責任を問う。))

東京創元社 『SF奇書天外』 北原尚彦 8/24 \2,415 ((古書マニア、SFマニアの間で密かに語り伝えられる奇妙奇天烈・奇想天外な小説ばかりを精選し紹介する、ファンの必携の書。))
東京創元社 『もろこし銀侠伝』 秋梨惟喬 8/24 \1,680 ((「第3回ミステリーズ!新人賞」受賞の少女&怪老人コンビの痛快探偵譚「殺三狼」など、『水滸伝』時代の中国を舞台に描くミステリ連作集。))
東京創元社 『田舎の刑事の趣味とお仕事』 滝田務雄 8/24 \1,575 ((敏腕刑事の黒川と無能な部下の白石、そしてなぜか黒川の奥さんも大活躍。「第3回ミステリーズ!新人賞」受賞作を含む脱力系警察小説。))

徳間書店 『夏の教室』 大塚英志/白倉由美原案 8/29 \1,785 

文藝春秋 『『面白半分』ベスト随舌選』 佐藤嘉尚 8/下 \1,700 ((筒井康隆井上ひさし吉行淳之介など12人の作家が交替で編集長を務めた希有な雑誌に登場した著名人の本音爆笑インタビュー集。))

ジャック・オコネル『闇に刻まれた言葉』を読む。断片化され輻輳するプロットがデイヴィッド・リンチ的な暗示性の不穏を醸し、緻密でグラフィカルな暴力描写や小道具はアレッハンドロ・ホドロフスキー的な象徴性を連想させる、神話的マジックリアリズムや哲学的ペダントリーで飾られた陶然の傑作。またジャック・オコネルが一貫として舞台とする工業都市クインシガモンドが素晴らしく、まるでベクシンスキーの絵画のように邪な旧き神々の禍々しさまといフリークスたちを呼び寄せけして手放さないゴーメン・ガーストのようにアポカリプティックな閉塞が厭らしい。ジェイムズ・エルロイの賛辞があったために、狂気と情念を描いて良しとするソープ・ノワールを期待していた向きには不評だったようだけど、よく考えりゃエルロイも小説の構成はテクニカルで複雑だからね(最新の邦訳作『獣どもの街』なんて言葉遊びだらけの(←そしてその雰囲気を可能な限り自然な日本語として移した田村義進の技巧のかっこよさ!)ポップノヴェルだったし)。いやしかしこんなに面白かったかねコレ、読み返してみて正直びっくりした。『ルビコン・ビーチ』(スティーヴ・エリクソン)や『ペニス』(津原泰水)が好きな人には絶対のお薦め本。