デイヴィッド・マレル『一人だけの軍隊』[bk1]

映像の世紀」視聴の余波でこれを読み返したくなって押入れを探すも、見つからず*1
ポストヴェトナム物ではわりと好きなほうで、気分しだいでは冒険小説オールタイムベスト20くらいには入れちゃうかもしれない。安易に戦後のトラウマによる狂気や不条理に走らず、町に入ろうとするランボーやそれを拒む警察署長の言い分がきっちり描かれていて、それでいて結局一人VS町全体の殺し合いというホラー小説顔負けの狂った地点までもっていってるところがすごい。映画版の『ランボー』は小説とのラストの相異で賛否いろいろ言われてますが、むしろ注目すべきは主役にスタローンというアメリカンドリームの具現とも言うべきマッチョ俳優をもって来たとこかと思います。ランボー対町全体の戦いは、言ってみればヴェトナム対アメリカの縮図に他ならないわけで、市民を(ヴェトナムの)ゲリラよろしくばったばったと殺していくランボー(≒スタローン≒アメリカンドリームの具現者)の活躍に喝采をあげるアメリカ人の観客…という構図はすばらしく皮肉に倒錯してるんじゃないかな。*2

*1:マレルの『トーテム』とかゲイ・タリーズ『汝の父を敬え』(マフィア物のノンフィクション)とか微妙に惜しいところは発掘。タリーズはそのうち読み直すかも

*2:という趣旨の論説はすでにどこかで書かれてたような気もするんだけど…うーん