山田正紀『サイコトパス』[bk1]
いつもどうりの山田正紀、現代思想のタームをファッションとして流用してメタフィクション的な趣向を施した思弁的なハッタリの強いサイコサスペンスの佳作です。圧巻だったのは最終章。そこで示される“動機の無い犯罪者”に対する『鏡の国のアリス』的な倒錯していてナンセンスなテーゼが爆笑物で、これを言いたいがためにサイコトパス/ベラスケス・エンジンという魅力的なガジェットを持ちだしてくる豪快さはさすが。堪能しました…といいたいところですが、作者あとがきでこの作品を“自信作”と書いてあるところに引っかかってしまいました。『神獣聖戦』『エイダ』など、溢れんばかりのガジェットに作者自身がぶんぶん振り回されて制御しきれていないような作品を山田正紀に期待しているぼくとしては、この『サイコトパス』から始まる物語をこそ読みたいのであって、確かに完成度の高い破綻を見せてくれはするものの、この作品を自信作とまで言ってしまうのはちょっと…