桜坂洋『ALL YOU NEED IS KILL』[集英社/集英社スーパーダッシュ文庫][bk1]

訓練校出たての初年兵である主人公は、絶体絶命の戦場にて死亡したはずなのに目覚めればその後数十時間前へと戻ってしまっている。幾度も同じ戦いと死と時間移動を繰り返したのち悟ったのは、己の死によって得た経験によって貧弱な肉体を効率的に使いこなし絶体絶命の戦線をくぐり抜けなければならないということ…いわばケン・グリムウッド『リプレイ』[bk1]の戦場版といってもいい。要するに『リプレイ』と同じ程度には面白いということで、つまりエンターテインメントとしてならば文句のつけようの無い面白さということでもある。とはいえそれは→ 戦闘データを過去に送るという敵の能力(主人公の時間ループはそのとばっちり) ←という設定が持っているゲーム性/哲学性の一切を切り捨てた上で成り立っている娯楽性であって、たとえば帯に推薦を書いた神林長平ならばもっとこの設定を生かした思弁的なSFに仕立てたんじゃないかと思われてならない。期待しすぎといえば期待しすぎだったかも。