タイムトラベラーズ・ワイフ』が好評であるところのオードリー・ニッフェネガーを一つ試してみましょうかということできみがぼくを見つけた日』(上・下)[ランダムハウス講談社文庫]を購入…したところ改題しての文庫化でございました。文庫落ち早くね? 読了本はジョナサン・キャロル『蜂の巣にキス』[創元推理文庫]…嫌な奴が酷い目にあう話で、そして配役のほとんどが嫌な奴で、おまけに嫌な奴はたいそう魅力的に演出されてる始末。それは語り手/騙り手のたくらみであり、物語の見えない部位をイメージさせようとする作者のたくらみでもある。ニコニコ笑顔の牧歌的シーンもひりひりするテンションが潜んでいそうで油断がならない。とってつけた“ような”ラストも不穏で実によろしい。ジョナサン・キャロルならではの悪趣味と意地の悪さを存分に堪能いたしましたとさ。