ジャック・カーリイ『百番目の男』[文春文庫/文芸春秋][bk1/amazon]

軽快な文体のドライヴ、洒落た皮肉の効いてる会話にニヤリと笑えても、トータルで見ればフォーミュラな刑事物の印象が付きまとう。女医のアレや兄弟のアレはさあこれからというところであっさり味に…「とりあえず営業政策的に設置してみましたけど突っ込みきれませんでした」感じでじつに消化不良ぎみ。アベレージはキルタイムにうってつけといったところ。
しかしそんな紋切り型の感想は、この首切り連続殺人がどのような動機のもとに行われたか/いわゆるホワイダニットを前にして粉砕される。ミスター・カッター*1、あんたはアホや、よくやった、感動した。あたしゃよく知らんけどこれがVIPクオリティってヤツ? とにかくこのミステリ、375頁5行目までは単なる前ふりだし384頁4行以降は蛇足に過ぎない…といったら間違いなく言い過ぎではあるが構うもんか。

 

*1:追記:ミスター・カッターってのは人名じゃないです、首切り魔ってことです。あらためて読んだら、なんかネタバレっぽく受け取られかねない書き方かもしれないと思われたのでいちおう注記