林譲治『記憶汚染』[bk1]
おもしろかった。
アイデアそのものに目新しさは感じないんだけれど、文庫本400頁弱の中にこれでもかッとばかりにキー・ワードをあれもこれも詰め込まれるともうくらくら(列挙しようかとも思ったがネタバレっぽくなりそうなのでX)。SFというよりはむしろ近未来スリラー仕立ての伝奇小説、物語の途中からは科学的裏付けなんて些細な問題は無視して飛ばしまくり・・・いやさすがに後半部分はもう少し書き込んでくれてもいいんじゃないかな。
あと、林譲治といえば縦型管理主義的組織と横型現場主義的組織を対比させるのが定番となってるけど、この小説も後者の側のプロモーションノヴェルといってもいいぐらい現場開発組に肩入れしている。まあ、たとえそれがどんなにいい組織体系だろうとそのノードが人間であるかぎりきっとろくなものにはならない、そうぼくは考えている。組織が大きくなればなるほど人間という種の持っているそのろくでもなさは顕著になるだろうし、・・・だからこそ今回の物語ではXXXという存在をもちだしたのかもしれない。