作品社から1000部限定*1で出版された国枝史郎探偵小説全集』[bk1/amazon/boople]は推理ものというよりもドイル、ル・ブランにも通じるエキゾチックな衒学伝奇ロマン短編であって、実に僕の趣味にマッチしてていい。こういうのを読んでいると京極夏彦がまるでジュラシックパークのごとくテクノロジーによってDNAから再生された太古に滅びた種族の末裔であることを再認識させられる。他にこの国枝アンソロジーで注目なのは大衆文芸関連のエセーがかなり収められていること。古風で華麗なレトリックが心地いいこれらの批評は、しかしあまり客観性というものが感じられず、小酒井不木をはじめとする知人に対するあられもない賛辞と宿敵江戸川乱歩や寡聞である作家に対する辛辣な意見、そしてそこからあからさまに浮彫りになる当時の文芸勢力図/交友関係が読み取れて、じつは小説群よりも興味深く読めたりする。そうこう愉しんでて、ふと電子文庫パブリを久しぶりに覗いてみると『神州纐纈城』がe-novel化されてるではないですか。講談社から出ていた文庫叢書大衆文学館もだいぶん復刊されていてこれはじつにすばらしいことじゃないですかね。

*1:限定って言葉にはやっぱり弱いのか→オレ