ジョイス・キャロル・オーツ『生ける屍』[扶桑社ミステリー文庫/扶桑社][bk1]

Q・Pことクェンティン31歳のデイズ・オブ・ライフ、アジア・アフリカ系の連中があつまる婆ちゃん譲りの下宿管理人をやりながら大学に聴講にゆく日々、パパは教授で気立てのいいママ、頼りになる姉貴のやさしさにつつまれて、いつも考えることといえば美少年の尻と口唇、あの子達がおれの意のままになるように今日も今日とてアイスピック片手に勤しむのはゾンビー造り、ロボトミーのやり方を知ってるかい、まぶたの裏からこう突っ込んでぐいっと捻るんだぜ…
BGMにはヴェルヴェット・アンダーグラウンドがよく似合う。単純なメロディを脅迫的なテンションでかさねるダウンビロウな重いドライヴ感と背徳が全編を貫く、妄想というにはあまりにも日常的な異常の日々の覚え書きというべきか。ホラー小説では、まったく無い。煽情的でコマーシャルな描写も無い。モダンホラーのようなエンタテインメントでは到底達することのできない“低地”の極み。これこそ“世界の中心で愛をさけんだ獣”の正しい肖像画でしょう。猛毒。