ロバート・リード『地球間ハイウェイ』[bk1]

並行宇宙に存在する無数のヴァリエーションを持った地球、それら結ぶ“輝き”と呼ばれる地球ハイウェイ、それを作ったと信じられている“創建者”を求めて“巡りびと”たちがさまざまな姿の地球を遡行する百万年におよぶ旅。
…この壮大な設定は、しかし設定のみで終わってしまっています。本書で描かれる事件は、“旅”の重大な分岐点にはなっていても、“輝き”や“創建者”の存在理由には触れられないままに終わってしまう。解説で伊藤典夫さんが“…作者もキリスト教色がでることを巧妙に避けているようなので…”と書かれているように宗教小説的な肌触りはまったく無いものの、それでもやはりこの物語は“創建者の探究”という教義の意義を問いかける物語であって、そこには冒頭で書いたような壮大な背景から予感されるセンス・オヴ・ワンダーを感じ取ることはできませんでした。世界観の大きさと物語のスケールの差の違いが本書の印象を小さくしているような気がしますね。
そうはいってもけっこう楽しんで読めたのも確かで、読んでる途中で「…萩尾望都っぽいな」とか考え始めてからはけっこうツボにはまりました。数々の亜種の人類、物語背景の枠のおおきさとかなんか妙に共通するところが多くて、あの絵柄を思い浮かべながら…いやけっこう好きですよこの本。一昔前ならばハヤカワ文庫SFの白背ででてたような本で、こういう佳品が毎月のようにでてたころをちょっと思い出したりもしました。パメラ・サージェントの『エイリアン・チャイルド』とかジェイムズ・H・シュミッツ とかフィリップ・ホセ・ファーマーとかそーいうの。