『メシアの処方箋』[bk1]

これも惜しい。ヒマラヤで方舟が発見されて研究に取り掛かるくだりは『星を継ぐもの』か『宇宙のランデヴー』という感じでわくわくさせるけれど、中に収められていた木簡にメシアの作り方が書かれていたということが割りとあっさり判明してしまうとサイエンス味が激減してしまう。香具師めいた人物が強引に”上に内緒でメシアを作ってみよう”という話を進め始めてから後は、施設、資金、人材の調達やらなにやらで大掛かりなコメディへと変貌するのだけれど、事態に巻き込まれた語り手役の主人公がぶつくさ愚痴を言い続けている印象ばかりが残ってすっきりと笑えない。この不運な主人公が傍若無人な連中に振り回されるさまを三人称の視点で描いてくれたらもっと楽しかったんじゃないかな。