葉越晶『逢魔の都市』[bk1]

だいたい、ぼくはウィアード・テイルズ系のお話にもめっぽう弱い。コナン、エルリックも好きだし、読まなくなってずいぶんとたつけれど初期のグイン・サーガ(とくに『七人の魔道師』から『氷雪の女王』のかけての外伝!)もお気に入りだった。近頃のファンタジーからはあまり見られることがなくなった、けれんみの無い魔術の、あやしい愉楽をもったエンターテインメント…その興奮を『逢魔の都市』はずいぶんと思い出させてくれた。なんといっても怪異を描き出すときの手付きがいい。時にシンプルに、時に修飾を凝らしてさし出される魔術的ガジェットの数々からはしっかりとした瘴気が匂ってゾクゾクさせられる。文句をつけるとすれば、主人公が多少超人的なところがあって、危機に出会っても”まぁ何とか切り抜けちゃうんだろうな”とか思えてしまうところぐらいかな。