『本格小説』

先日選んでみたベスト3、そういえば洋物しか選んでないな…と考えて思い出したのが水村美苗本格小説[bk1]、今年はじめに読んでました。いやコレは絶品。後半までやたらとじれったくて読んでるほうが恥ずかしくなるような恋愛模様がえがかれて、正直そんな甘い恋愛物を読む場所にいなかったぼくとしては「これはたまらんなぁ(苦)」という感想だったのですが、最後に至って仰天。まさかそういう意味で "本格" と名付けたわけじゃないのでしょうけど、終わり近くで明かされた事実がそれまでに読んだ物語の性質を一変させたとあってはもうたまりません。もう一度読み直してため息をつきました。"自分の身の回りにおこったこと"を読者に語ってみせる「私小説」と対応するように、話手が"自分の身の回りの人におきていたこと"を聞き手(視点人物)に語る小説を「本格小説」と呼ぶのかな…と上巻を読み終えたあたりでは考えてましたが、いやいや作者は一枚も二枚も上手でした。物語も趣向も抜群、脱帽です「本格小説」とはよく言ったものですな。