月を二つに砕き世界中を壊滅させた"千年紀大戦"。廃墟とフリークスで埋め尽くされた地球上で、日本は奇跡的に国家として存続していた。大戦以前にロシアで作られたスターシップによる星間移民によって人類のフィジカルなサバイバルを目指す"生存大臣イシダ"と、日本的美学に基づく死に様を推奨し国家的自殺の政策を進める"終末大臣タカハシ"のパワーゲームは、少女がもたらしたクジラからのメッセージによって大きなうねりを見せ始める
…という話だと思ったんだけどなぁ(笑)。再読してみたら政治闘争なんてほとんどなかったのですよ、ソムトウ・スチャリトクル『スターシップと俳句』。だいたい慰謝大臣カワグチの存在なんてかけらも覚えてなかったんでびっくりした。おかしいなあ、これ読んだ後フランク・ハーバートの『デューン』をまとめ読みをしたはずだからごっちゃになって記憶を改変してしまったかしらん。ちなみに→クジラが(テレパシーによって)少女に伝えたのは「日本人はクジラの(遺伝子改変された)子孫である」ということ。タカハシは「日本人は先祖を殺して食っていた−民族的な親殺しをやってきたのだから恥じて死ね!」というプロパガンダをだして、自分の自殺を演出したり、でもこっそり生きてて"死の帝"と名乗ってシコク(死国)という自殺用パビリオンを作ったり、スターシップによる移民に参加しようとするイシダ・リョーコ(クジラとコンタクトした少女、生存大臣の娘)、ジョッシ(ナカムラ・ヨシロウ、帰国子女、非日本人的美意識を持つ日本人)とその弟ディディ(クジラ的精神性を持つ)を自殺させようと洗脳を試みたり、その気取った妄執たるやなんというか"タカハシ萌え"?←という感じでした。全体主義的、国家的スケールの自殺志向によって糜爛してゆく世界を少年と少女が目撃して行くグランギニョル、堪能しました。
…それと、とっても不謹慎だとは思いましたが→タカハシと現アメリカ大統領ブッシュが重なって見えて←そういう意味でもなかなか得がたい体験だったかな。