俺はレッド・ダイアモンド

もしかしたらすべてはチャカの妄想かもしれないのだ。『東京サッカーパンチ』の東京は本当はきわめて真っ当な街で"紫の地引網"も"山鎌組"も"剣会"も探偵井原の事務所の"XXX"も、客観的にみれば(日本人にとっては)ごく普通であって、そこで交わされた会話もまっとうな"礼儀"や"謙虚"さにのっとったものだったかもしれない。ただチャカの脳内フィルターがこの世界が"普通"であることを許さず、極端にファンタジックなワイドスクリーンをその眼に映している・・・そう考えて本書を読んでみることだってできるだろう。そのように偏向した思考を持つにいたったチャカの過去とはいったい!!
なんちゃって
いや、そういう物語はあるんです、マーク・ショア『俺はレッド・ダイアモンド』[bk1]。パルプ小説を集めるのが趣味のタクシードライバーサイモン・ジャフィーが妻に蔵書を処分された!ガーン。街をふらついていたら美人局にあってしかも殺人事件に巻き込まれた!!ガガーン。自分はこんなとこに隠れてていいのかダメだダメだ逃げちゃダメだ・・・というなりゆきで自分自身を偏愛するヒーロー探偵レッド・ダイアモンドだと思い込んでしまう。やることはもちろん国際的な大悪党ロッコ・リコ(架空)に囚われた最愛のフィフィ(架空)を救い出すことだ。
・・・イタタ、もう最高です。この勘違いヒーローが大活躍!でも(中の人がタクシードライバーだから)すぐ息切れみたいな。妄想だったらもっと楽な妄想を選べばいいのに、とか思わないでもないが当人が幸せそうなので無問題ですな。ハメットとチャンドラーを一通り読んでからだと破壊力はいっそう増します。ハードボイルド入門編にいかが?最初にコレってのもけっこういけると思いますよ、多分。
.。oO( でもラストはけっこう切ないんだ、これ )